なぜ、建設業界は景気が良いのに倒産が増えているの?「人手不足倒産」と「2024年問題」を解説

建設業界はコロナ禍の影響も落ち着き、仕事が豊富で景気が良い状況にあります。しかし建設会社の倒産件数は過去にないほど増加しています。主な原因は「建築資材費・物流費の高騰」「コロナ関連融資の返済開始」「税金・社会保険料の滞納」「人手不足」の4つ。特に増えているのが、資格を持つ社員の転職・退職をきっかけとする「人手不足倒産」で、その8割は社員数10人未満の零細企業です。さらに時間外労働の上限規制が適用される「2024年問題」により、休みを取りやすい大手への人材流出が加速。業績の二極化が進み、資材高の影響を真っ先に受ける「元請け」から倒産が増えているのが現状です。

Q&A

Q1景気が良いのに、なぜ建設会社の倒産が増えているのですか?

主な原因は「建築資材費・物流費の高騰」「コロナ関連融資の返済開始」「税金・社会保険料の滞納」「人手不足」の4つです。特に社員の転職・退職をきっかけとした「人手不足倒産」が増加しています。

Q2建設業界の「人手不足倒産」は他業界と何が違いますか?

他業界では「低賃金で働く人が減ったから」と言われますが、建設業界では「資格や技術を持った社員が転退職してしまう」ことで倒産が起きています。専任技術者がいないと建設業許可を維持できないためです。

Q3人手不足倒産はどんな会社で多いですか?

人手不足倒産の8割は社員数10人未満の零細企業です。資格を持つ専任技術者が1人だけの会社では、その1人の転職や引退が廃業に直結します。

Q4建設業界の「2024年問題」とは何ですか?

働き方改革関連法に基づく時間外労働の上限規制が、5年の猶予期間を経て2024年4月から建設業にも適用されたことを指します。違反した場合は罰則の対象になります。

Q52024年問題は倒産増加にどう影響していますか?

組織が大きいほうが交代で休みやすいため、大手は積極採用を進めています。一方、小さな組織は一人が複数の役割を兼務して休みにくく、休みを求めて人材が転職し、人材流出した企業の業績が悪化しています。

Q6どんな建設会社が倒産しやすいのですか?

意外にも「元請け」と呼ばれる工事を請けることが多い会社です。資材を仕入れるのは元請けが多いため、建築資材・運賃高の影響を真っ先に受けるからです。

景気は回復しているが、倒産・廃業も増加

「景気が良くなると、建設会社の倒産が増える」

建設業界はコロナ禍の影響も落ち着き、仕事はたくさんあって景気が良い、と言えます。しかし、2023年~2024年上半期にかけて、建設会社の倒産(破産などの法的整理)件数は過去にないほど増加しており、調査会社・帝国データバンクは「2024年は過去10年で最も倒産件数が増える」と予測しています。

なぜ今、建設会社の倒産が増えているのでしょうか?

建築資材費・物流費の高騰

コロナ関連融資の返済開始

税金、社会保険料の滞納(年金機構などによる督促)

人手不足

この4つが主な原因です。

「資格を持った社員の転退職」が倒産を招く

特に増加しているのが「社員の転職・退職」をきっかけとした「人手不足倒産」です。景気回復によって転職が活発化しています。全産業ベースですが、転職希望者は7年連続で増加しています。「転職35歳限界説」も薄れ、30代~50代の転職も活発化しています。

建設会社は社内に専任技術者と言われる国家資格者、経験者を常勤で配置しなければ建設業許可を維持できません。「人がいないと売上が立たない産業」と言われる理由です。

もし、資格を有する専任技術者が1人だけの小さな会社で、その1人が他社に転職してしまう、高齢のため引退してしまうとどうなるでしょうか? 許可を維持できず、事業を続けられません。人手不足倒産の8割は社員数10人未満の零細企業です。

人手不足倒産は「低賃金で働く人が減ったから」と他業界では言われますが、建設業界に関しては「資格や技術を持った社員が転退職してしまう」ため倒産が起きています。建設業界は法令で有料人材紹介が制約されているにも関わらず、年間15~20万人が「縁故」「ハローワーク」などを通じて業界内で転職しています。10年で社員の4割弱が入れ替わる計算になります。

業績の二極化が進み、成長企業へ人材が流出する

帝国データバンクの調査では2024年度、増収増益見込みの建設会社は22%と前年から増加。他方、減収減益見込みは24%で業績の二極化が進んでいます。景気回復の恩恵を受ける企業がある一方、成長企業に転職する人が増え、人材が流出した企業の業績が悪化しているのです。

また、同じ県内でも格差は広がっています。たとえば長野県では富裕層の流入が進む軽井沢と、それ以外の過疎地域の格差が広がっています。

2024年問題──時間外労働の上限規制が人材流出を加速

さらに業界全体に影響を与えているのが「2024年問題」、正確には「時間外労働の上限規制」です。

2019年に施行された働き方改革関連法に基づき、長時間の残業・休日出勤(時間外労働)を規制し、違反した場合、罰則の対象にするものです(ただし、災害からの復旧・復興のための業務に限り、特例的に適用されない)。大企業においては2019年4月、中小企業では2020年4月から適用されています。ただし、建設、物流、医師に関してはこの法令の適用に5年の猶予期間が設けられました。その猶予が終わるのが2024年4月なので、2024年問題と言われています。

2024年問題の対策として、大手企業は新卒、中途人材を積極的に採用しています。当然ながら組織が大きいほうが早く仕事を終えて、交代で休めるケースが増えます。小さな組織ほど一人の人が複数の役割を兼務して業務が回っているので、休むことが難しく、休みを求めて人材が転職します。

建設会社は元請けから倒産する

また、意外かもしれませんが、建設業界で今、倒産件数が多いのは「元請け」で工事を請けることが多い会社です。「建設会社は元請けから倒産する」のです。

資材を仕入れるのは元請けが多いので、建築資材・運賃高の影響を真っ先に受けるんですね。そのため一次、二次請けの会社は元請けの「工事代金未払い」に備える保険に入ることもあります。

出典

  • 高木健次著『建設ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング 2025年1月刊)より抜粋
  • https://www.amazon.co.jp/dp/4295410551