建設業界はCO₂をどう減らしている? 建設現場・資材・建物に広がる15社の取り組み
建設業界では、工事中の燃料や電力、コンクリートなどの建設資材、完成後の建物の運用まで、さまざまな場面でCO₂が発生します。削減策も、建設機械の電動化や再生可能エネルギーの利用、CO₂を吸収・固定するコンクリート、建物の省エネ化など多岐にわたります。本記事では、鹿島建設、大林組、清水建設などの大手から、マンション建設や海洋土木を得意とする企業まで、15社の取り組みを紹介します。排出量を測り、設計から施工、使用、解体まで管理する動きにも注目します。各社の目標・実績は対象年度や算定範囲、比較条件が異なるため、数値の大きさだけで比較せず、技術や取り組みの違いを見ていきます。
Q&A
Q1建設業界では、どのような方法でCO₂を削減していますか?
主な方法は、建設現場の脱炭素化、建設資材の脱炭素化、建物のライフサイクル全体での削減です。電動建機や再生可能エネルギーの利用、低炭素コンクリートの開発、建物のZEB化や省エネ設計などが進められています。
Q2CO₂を吸収するコンクリートはありますか?
鹿島建設のCO₂-SUICOM®は、コンクリートにCO₂を吸収・固定させる技術です。西松建設も、CO₂を吸収・固定した解体コンクリートの微粉末や再生骨材を利用した環境配慮型コンクリートを開発しています。
Q3建物のホールライフカーボンとは何ですか?
建設時に加え、使用や解体など、建物のライフサイクル全体で発生するCO₂を捉える考え方です。前田建設工業は2025年4月から、自社が設計・施工するすべての物件で算出・見える化を開始しています。
Q4海上工事では、どのようにCO₂を減らしていますか?
作業船や建設機械の電動化、燃料の効率化、代替燃料の利用などが進んでいます。五洋建設はバイオディーゼルやGTLなどを活用し、東亜建設工業は廃食用油由来のバイオディーゼル燃料FAMEを作業船に利用しています。
建設業界では、工事中に使う建設機械の燃料や電力、セメントや鉄などの建設資材、完成した建物の運用まで、さまざまな場面でCO₂が発生します。だからこそ、脱炭素化へのアプローチも一つではありません。
再生可能エネルギーの利用や電動建機の導入、低炭素コンクリートの開発、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の推進、CO₂排出量の見える化など、各社がそれぞれの技術や事業領域を生かした取り組みを進めています。
今回は、スーパーゼネコンから準大手、マンション建設や海洋土木を得意とする企業まで、建設会社15社のCO₂削減の取り組みを見てみましょう。
鹿島建設
鹿島建設が開発した「CO₂-SUICOM®」は、コンクリートにCO₂を吸収・固定させる技術です。一般的なコンクリートと比べて、1㎥あたり約306kgのCO₂削減効果があり、最終的には1㎥あたりマイナス18kg-CO₂となる「カーボンネガティブ」を実現しています。2025年の大阪・関西万博では、大気から回収したCO₂を利用した「CUCO-SUICOMブロック」も使用されました。
コンクリートは、建設業界に欠かせない材料です。そのコンクリート自体にCO₂を吸収・固定させることで、建設資材をCO₂削減に役立てようとしています。
大林組
大林組は、建設現場で使用する軽油の代替燃料や電動建機の導入を進めています。さらに、再生可能エネルギーへの切り替えなどにより、2024年度には国内における電気由来のScope2排出量ゼロを達成。一般電力を使用した場合と比較したCO₂削減効果は54千t-CO₂としています。
建設現場だけでなく、完成後の建物についてもZEB化を推進するなど、施工から建物の運用まで幅広くCO₂削減に取り組んでいます。
大成建設
大成建設は、建設現場で発生するCO₂排出量の把握と削減に取り組んでいます。現場で使用する電力や燃料などを把握し、どこで、どれだけCO₂が発生しているのかを見える化。こうしたデータをもとに、具体的な削減策につなげています。また、CO₂をコンクリート内部に固定する技術なども開発しています。
CO₂を減らすには、まず排出量を把握する必要があります。現場ごとの状況を測ることが、具体的な削減策を選ぶ第一歩になります。
清水建設
2050年に向けた環境ビジョン「SHIMZ Beyond Zero 2050」を掲げる清水建設。目指しているのは、自社のCO₂排出量を減らすことだけではありません。建設、建物の利用、解体まで、建物のライフサイクル全体を通じて環境負荷を低減し、社会にプラスの環境価値を提供することを目指しています。2025年10月には、脱炭素、資源循環、自然共生の3分野について、2030年・2040年の中間目標を含むロードマップを策定しました。
建物は完成した後も、長い時間をかけてエネルギーを使い続けます。だからこそ、「つくるとき」だけでなく、「使うとき」や「役目を終えるとき」まで視野に入れています。
竹中工務店
竹中工務店は、2022年から「チャレンジ!ゼロCO₂作業所」を展開しています。2023年からは、原則として新たに着工するすべての作業所で、再生可能エネルギー由来のグリーン電力を採用。建設現場で使用する電力の脱炭素化を進めています。さらに2025年には、植物油や廃食用油などを原料とする次世代バイオディーゼル燃料の建設現場への導入を開始しました。全国の建設現場への展開も進めています。
電力を再エネに切り替えるだけでなく、建設機械などで使用する燃料にも目を向けているのが特徴です。
前田建設工業
前田建設工業は、2025年4月から、自社が設計・施工するすべての物件を対象に、建築物の「ホールライフカーボン」の算出・見える化を開始しました。ホールライフカーボンとは、建設時だけでなく、建物の使用や解体など、ライフサイクル全体で発生するCO₂を捉える考え方です。
設計段階からCO₂排出量を算出し、構造や設備、建設資材、工法、運用方法などについて、CO₂削減につながる提案や採用を進めています。建物が完成してからCO₂を減らすのではなく、設計の段階から「この建物は一生でどれだけCO₂を排出するのか」を考える取り組みです。
戸田建設
戸田建設では、建設現場のCO₂削減に向け、2010年から「低炭素施工システム(TO-MINICA)」を運用しています。省エネ工法や省燃費運転、建設機械のハイブリッド化など、62のCO₂削減メニューを用意。現場の特性に応じて、適した対策を選択します。
同社では、自社のScope1・2排出量の約90%が、施工段階における建設機械や電力の使用によるものと分析しています。現場の条件は一つひとつ異なります。すべての現場に同じ対策を当てはめるのではなく、工事の内容や環境に合わせて削減策を選ぶ仕組みを整えています。
熊谷組
熊谷組は、再生可能エネルギーの利用を進めています。熊谷組グループでは2050年までに使用電力の100%再生可能エネルギー化を目標とする一方、熊谷組単体では目標を前倒しし、2030年までの達成を目指しています。2025年度からは、すべての新規工事で再エネ電気を使用する方針を掲げています。さらに、ハイブリッド重機やバイオ燃料B100など、建設現場で使用する燃料の削減にも取り組んでいます。
西松建設
西松建設は、CO₂を吸収・固定した解体コンクリートの微粉末や再生骨材を利用した、環境配慮型コンクリートを開発しています。再生材料の使用率は約60%。1㎥あたりのCO₂排出量は、通常の製品と比べて99.5%削減できるとしています。建設業界では大量のコンクリートを使用するため、材料そのもののCO₂排出量を減らす効果は小さくありません。解体されたコンクリートを再び建設資材として活用することは、CO₂削減だけでなく、資源循環にもつながります。
東急建設
東急建設は、建物に使用する資材のCO₂排出量を見える化する取り組みを進めています。独自の低炭素建材データベース「CMCOS」では、建材のCO₂排出量を比較・検索できます。設計や施工の段階で、よりCO₂排出量の少ない建材を選ぶための仕組みです。さらに、省CO₂・省力化コンクリート「ハイプロダクリート」では、従来のコンクリートと比べてCO₂排出量を最大73%削減した実大施工実験の結果も報告しています。建物のCO₂排出量は、どんな材料を選ぶかによっても変わります。建材選びを支える仕組みづくりも、脱炭素化の一つです。
長谷工コーポレーション
マンション建設で知られる長谷工コーポレーションでは、施工段階で排出するCO₂の約90%が、軽油の利用に起因すると分析しています。そこで、環境配慮型燃料「GTL・B5」の使用に加え、フォークリフト、ラフテレーンクレーン、バックホーなど、建設機械の電動化を進めています。
また、建設発生土を現場内で利用することで運搬車両を減らすなど、物流面からもCO₂削減に取り組んでいます。燃料を変える、建設機械を変える、運搬を減らす。マンションをつくる過程にあるCO₂排出源を、一つずつ見直しています。
五洋建設
港湾・海洋土木を得意とする五洋建設。海上工事では、建設機械だけでなく、作業船で使用する燃料もCO₂排出の大きな要因になります。そこで、作業船や建設機械の電動化、燃料の効率化、バイオディーゼルやGTLなどの代替燃料、再生可能エネルギーの活用などを進めています。陸上の工事とは異なり、海上では作業船の存在が欠かせません。五洋建設は、こうした海洋土木ならではの課題から脱炭素化に取り組んでいます。
三井住友建設
三井住友建設は、2030年に向けてCO₂削減を進め、2050年のカーボンニュートラルを目指しています。建設段階では、低炭素コンクリートやカーボンフリースチール、再生建材などの活用を検討。さらに、H₂エンジン建機やEV建機、バイオディーゼル燃料などの導入も進めています。
完成後の建物についても、ZEBや既存建物のZEB化を推進しています。一つの技術だけに頼るのではなく、建設資材、施工現場、建物の運用まで、複数の方法を組み合わせてCO₂削減を進めています。
※三井住友建設は、2026年10月1日に「アルソシア建設株式会社」へ社名変更を予定しています。
東洋建設
東洋建設は、港湾・海洋土木で培った技術を生かし、脱炭素を新たな事業領域として捉えています。2025年9月には、「洋上風力事業本部」を「GX事業本部」へ発展させました。現在は、洋上風力発電に加え、海底直流送電線、海底資源、CO₂の回収・貯留(CCS)など、多岐にわたる分野への事業参画を進めています。建設会社自身のCO₂を減らすだけでなく、脱炭素社会を支えるインフラや技術を担うことも、建設業界の役割になりつつあります。
東亜建設工業
東亜建設工業も、港湾・海洋土木を得意とする建設会社です。海上工事では、作業船の燃料がCO₂排出につながります。そこで、廃食用油からつくられたバイオディーゼル燃料「FAME」を作業船に利用するなど、船の脱炭素化を進めています。また、2025年度の国内工事では、施工高が2020年度より増加した一方、CO₂排出量は2020年度比45.9%減少しています。工事量を維持・拡大しながら、CO₂排出量をどう減らすか。海上工事でも、燃料の転換や省エネ技術の導入が進んでいます。
建設業界のCO₂削減は「現場」から「建物の一生」へ
今回紹介した15社を見ると、建設業界のCO₂削減には、大きく3つの方向があることがわかります。
一つ目は、建設現場そのものの脱炭素化。電動建機やバイオ燃料、再生可能エネルギーなどによって、工事中に排出されるCO₂を減らします。
二つ目は、建設資材の脱炭素化。特にコンクリートは、建設業界にとって重要なテーマです。鹿島建設のCO₂吸収コンクリートや、西松建設の再生材料を活用したコンクリートなど、新しい技術が生まれています。
三つ目は、建物のライフサイクル全体でCO₂を減らすこと。建物は完成したら終わりではありません。長期間にわたって電気や熱を使い続けるため、ZEB化や省エネ設計などによって、完成後のCO₂排出を減らすことも重要です。
さらに最近では、CO₂排出量を「測る」「見える化する」取り組みも広がっています。
つまり建設業界の脱炭素化は、「現場の燃料を減らす」
→「建設資材を変える」
→「建物のエネルギー消費を減らす」
→「建物の一生のCO₂を管理する」というように、取り組みの範囲を広げています。
建設会社を就職先として見るときも、「どんな建物をつくっているか」だけでなく、「環境問題に対して、どんな技術で挑戦しているか」に注目してみると、企業ごとの違いが見えてきます。
建設業界は、街をつくるだけではありません。これからの低炭素な街をつくる仕事でもあるのです。
※目標値・実績値は対象年度や算定範囲、比較条件が異なるため、単純比較には注意が必要です。