建設業界の給料は高いの?低いの?統計データから見る建設業の年収の実態

「建設業界の給料は低い」というイメージは、国交省の資料の記載もあって広まっていますが、統計を検証すると実態は異なります。建設業はこの10年で最も平均年収が上がった産業です。特に注目すべきは女性の年収で、建設業で働く女性の平均年収は男性と大差がなく、他産業と比べて際立って高いのが特徴です。ただし課題もあります。労働時間が長いため時給ベースでは製造業に劣ること、週休2日が定着しておらず主要産業で最も出勤日数が多いことなどです。酷暑や災害復旧など過酷な業務がある分、もっと給料を上げるべき業界とも言えます。

Q&A

Q1建設業界の給料は本当に低いのですか?

いいえ。建設業はこの10年で最も平均年収の上がった産業です。男性の平均年収は製造業より若干低いものの、卸小売業、サービス業より高い水準です。

Q2なぜ「建設業の給料は低い」というイメージがあるのですか?

国交省の資料にもそうした記載があり、誤解を招いている面があります。また10年前の建設業の年収水準が低すぎたことも背景にあります。

Q3建設業で働く女性の給料はどうですか?

建設業で働く女性の平均年収は男性と大差がなく、他産業と比べて高い水準です。「建設業は女性の貧困を救う可能性がある」と言えます。

Q4建設業の給料に課題はありませんか?

あります。労働時間が長いため「時給ベース」では製造業に劣ります。また、年収の伸びは全体平均の話であり、小さな会社で働く職人や一人親方の給料は上がっていません。

Q5建設業界は「ブラック」なのですか?

主要産業で最も出勤日数が多く、祝日に休めないことが、ブラックと呼ばれる背景にあります。ただし、公的機関への労働相談件数は建設業では多くありません。

Q6建設業界の休日は増えていますか?

.:2024年問題をきっかけに業界を挙げて休日を増やす活動が進み、労働時間は毎年短くなっていますが、週休2日はまだ定着していません。

「建設業の給料は低い」は本当?統計を検証する

「建設業界の給料は低い」──国交省の資料にもそう記載があるので、若干誤解を招いています。きちんと統計を検証してみると、以下の通りです。

・建設業界はこの10年で最も平均年収の上がった産業

・建設業の男性の平均年収は製造業と比較すると低いが、卸小売業、サービス業より高い

・建設業の女性の平均年収はサービス業などの他産業比で高く、男性と同じくらい稼げる

・ただし、労働時間が長いため「時給ベース」では製造業に劣る

・あくまで全体平均で、小さな会社で働く職人や一人親方の給料は上がっていない

国税庁・民間給与実態調査の2022年と2012年の産業別平均年収の比較を見てみると、建設業の平均年収が伸び、サービス業、卸小売業があまり伸びていないことがわかります。10年前の建設業の年収水準が低すぎたせいでもあり、上がったというより「適正水準になりつつある」とも言えます。

建設業の男性の年収は、世間で言われるほど悪くない

2022年の産業別年収を男女別に見てみると、男性は製造業、卸小売業、サービス業、建設業で働く人が多いです。この4産業を比較してみると、建設業の年収水準は製造業に若干劣るものの、卸小売業、サービス業と比較すると年収300万円以下で働く層が13%と少ないです。これは建設職人の人材派遣が法令で制限されているため、非正規雇用が少ないことが影響していると考えられます。「建設業の給料は世間で言われるほど今は悪くない」と言えます。

ただし、建設業は酷暑、厳しい寒さでの屋外業務があり、さらに災害後の復旧にも従事します。屋内作業が多い製造業と比較すると、「過酷な分もっと給料を上げるべき」と言えます。

建設業の女性の年収は男性と大差がない

女性は医療福祉業、卸小売業、サービス業、製造業で働く人が多く、女性就業者全体の2~3%しか建設業就業者はいません。卸小売業、サービス業で働く女性の6~7割が年収300万円以下と、男性と比較すると年収が著しく低いことがわかります。介護関係の就業者が増加している医療福祉業でも、4割以上が年収300万円以下です。

その中で、建設業で働く女性の平均年収は、男性と大差がありません。建設業で働くシングルマザーの方も「男性と同じ額の給料が稼げる」と述べており、「建設業は女性の貧困を救う可能性がある」のです。

「日本人の給料が上がらない」のは、女性の給料が低く抑えられ、特に卸小売、サービス業の非正規雇用が多く、給料が低いことが影響しています。経済協力開発機構(OECD、日、米を含む先進国38ヶ国が加盟する国際機関)のデータによれば、2022年の日本の男女賃金格差はOECD諸国平均の2倍です。「130万円の壁」と言われる社会保険制度上の特徴から「非正規雇用で働き控え」をする女性が多いなどの背景もあります。

女性の給料を上げていくためには、製造、建設、ITなどの業界の正規雇用で働く女性を増やす必要があります。IT業界では女性にITスキルを身に付けてもらい、年収を上げる取り組みが始まっています。女子大で「リケジョ」を増やす取り組みが盛んなのも似た狙いと考えられます。

ブラックと呼ばれてしまう背景には、休みの少なさがある

建設業の労働時間は他産業より長いです。産業別月間出勤日数を例にとると、主要産業で最も出勤日数が多いです。他の産業では祝日に休めているのに、建設業だけ祝日がないことが「建設業界がブラック」と呼ばれてしまう背景にあります。

2024年問題をきっかけに業界を挙げて休日を増やす活動をして、労働時間は毎年短くなっていますが、週休2日も定着しているとはいえません。民間工事と公共工事で比較すると、公共工事の方が休みの面では改善傾向にあります。

他方で、公的機関に寄せられる労働相談件数を産業別に見るとサービス業、福祉関係が多く、建設業は多くありません。「手に職」の業界なので「会社で嫌なことがあったらすぐ他社に行けるから」と考えられます。

出典

  • 高木健次著『建設ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング 2025年1月刊)より抜粋
  • https://www.amazon.co.jp/dp/4295410551