建設業界の構造と会社の種類をわかりやすく解説!家の工事はなぜ分業制?
家一軒を建てるには、大工だけでなく現場監督、電気、給排水、基礎、外壁、屋根など10以上の職種が関わります。建設業界が分業制なのは、工事の行政許可(建設業許可・29種類)や資格・検定の種類が職種ごとに違うためです。「大工の許可で電気工事はできない」のが原則です。工事全体を管理する会社を「元請け」と呼び、代表格がゼネコンやハウスメーカー、工務店。そこから専門工事を請けるのが専門工事会社やサブコンです。この複雑な受発注構造を「多重請負構造」と呼びます。近年は「下請け」ではなく「協力会社」という呼称が広がり、力関係も必ずしも元請けが上とは限りません。建設業界は「体育会系」なイメージだけでなく、高度な知識と専門性を要する「資格産業」の側面を持っています。
Q&A
Q1家一軒を建てるのに、どれくらいの職種が関わりますか?
少なくとも10以上の職種(工種)が関わります。大工のほか、現場監督、電気、給排水、基礎、外壁、屋根など、各ジャンルのプロが分業しています。
Q2なぜ建設業界は分業制なのですか?
工事に必要な行政許可(建設業許可)の種類が職種ごとに違い、資格・検定の種類も異なるためです。例えば「大工の許可で電気工事はできない」のが原則です。
Q3「建設業許可」とは何ですか?
一定金額以上の工事を請け負うために必要な行政許可で、大工・左官・とび・解体など29種類あります。専任技術者の配置、経営経験、財産的基礎などの要件を満たす必要があります。
Q4現場監督と大工は同じですか?
違います。現場監督(施工管理)は工程・品質管理などの「段取り」を行う技術者で、実際に工事を行う職人(技能者)とは資格も役割も異なります。
Q5ゼネコン・ハウスメーカー・工務店の違いは?
工事全体を管理する「元請け」のうち、土木・非住宅を主に扱う総合建設業がゼネコン、全国的な住宅元請けがハウスメーカー、小規模の住宅元請けが工務店です。
Q6「下請け」という言葉は今も使われていますか?
.:業界では「協力会社」「一次請け」という呼び方が広がっています。近年は元請けと下請けの力関係も一様ではなく、財務状態の良い協力会社も多く存在します。
家の工事は大工さんが全部やるわけではない
「あれ? 家の工事って大工さんが全部やるんじゃないの? 分業なの?」
このように思われる方も多いかもしれません。実は、建設工事に関わるプレーヤーは細分化され、建設業界は分業を前提とした構造になっています。
例えば、新築戸建住宅を一軒建てるためには、少なくとも10以上の職種(工種)が関わります。積水ハウスなどの大手企業でも、一社で工事が完結することはありません。
大工さんだけで家が建つわけではなく、現場監督、電気、給排水、基礎、外壁、屋根と、各ジャンルのプロがいます。大工と現場監督は全く別の役割で、必要な国家資格・検定も違います。
「大工と鳶(とび)職って服装似てますけど違うんですか?」と聞かれることもありますが、全く違います。病院が内科、眼科と専門で分かれているように、建設業界も、家族や友人が建設会社に勤めているからといって、電気から屋根の工事まで何でもお願いしていいわけではないのです。
なぜ、建築業界は分業制なのか?
では、なぜ分業制なのでしょうか?
それは、工事に関わる行政許可の種類が違い、職種による資格・検定の種類も違うからです。「大工の行政許可で電気工事はできない」のです。
一定金額以上の建設工事を請け負うためには、建設業法に定められた行政許可「建設業許可」を取得する必要があります。許可の種類は大工、左官、とび・土工、解体など29種類あります。
建設業許可業者は、次のような要件を満たす必要があります。
・専任技術者……国家資格者や実務経験者を常勤で配置しなくてはならない
・経営業務の管理責任者経験……経営者に一定期間の経営経験がなくてはならない
・財産的基礎または金銭的信用……自己資本などが一定額以上なくてはならない
これは、工事を請け負うには資格や経験などの技術だけでなく、一定の経営、財務、法律などの知見が必要という考え方に基づきます。規制によって違法業者の参入を防ぐ狙いもあります。
建設業界は資格産業でもある
この建設業許可とセットで、建設業界には様々な資格や技能検定があります。厚生労働省所管の建設関係の技能検定職種だけでも30種類以上あります。
大工などの職人だけでなく、工事の工程管理、品質管理などの「段取り」を行う現場監督=施工管理も国家資格があります。施工管理(技術者)と、実際に工事業務を行う職人(技能者)とで、大きく資格・検定の種類は分かれます。「現場監督と大工は資格も役割も違う」のです。
「建設業界=やんちゃな体育会系」というイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、実際には「高度な知識と専門性を要する資格産業」の側面も持っています。
工事に関わる会社──ゼネコンから工務店まで
工事には多種多様な会社が関わります。しかも、工種によっては天候にも左右されます。
それらを調整し、工程、予算、品質、安全、資金、法務などを管理する会社を元請けと呼びます。その代表格がゼネコンです。
ゼネコンは「ゼネラルコントラクター(総合建設業)」の略。例えば大成建設などの大手ゼネコンは、リニア中央新幹線などの大型プロジェクトの設計、施工管理を行っています。市役所などの地域の建物は、地元に根付いた地場ゼネコンが設計、施工管理を行うことが多いです。工事には多額の資金が必要なため、元請けには金融的なリスクを負担し、資材を調達する役割もあります。
ゼネコンには施工管理職と設計職が主に在籍します。職人については、社員として直接雇用する場合(直接雇用の職人の組織を業界用語で「直営班」と言います)と、直接雇用せず外注で対応する場合の二種類に分かれます。後者の、直営班を持たないゼネコンが多いです。
ハウスメーカー・工務店・専門工事会社・サブコン
ゼネコンは主に土木、非住宅工事を行います。一方、住宅工事を行う全国的な元請けをハウスメーカー(積水ハウスなど)と呼びます。小規模の住宅元請けは工務店と呼ばれることが多いです。
ゼネコンやハウスメーカーから電気、足場、左官、解体などの工事を請けるのが専門工事会社で、直営班を持つ会社が多いです。ゼネコンの一次請けとして工事の一部を担い、規模が大きな会社をサブコン(サブコンストラクター)と呼ぶこともあります。サブコン大手は東京電力系の関電工などです。
この分業を前提とした複雑な受発注構造を多重請負構造と呼びます。
元請けと専門工事会社は同じ現場で一緒に仕事をしますが、施工管理と職人で法律上の扱いが違うほか、業務フローや原価・労務管理、資金の流れが全く違います。人材、金融、ITの会社で建設会社と関わる場合は、その違いをよく理解しておく必要があります。
「元請け」と「下請け」──変わりつつある力関係
一次請け、二次請け以降の会社を「下請け」と呼ぶ場合もあります。しかし、すでに業界では「下請け」ではなく「協力会社」「一次請け」という呼び方が広がっています。
近年、現場では「元請け」が「下請け」の顔色をうかがって仕事をするなど、力関係は必ずしも「元請け」が上とは限りません。赤字に苦しむ大手ゼネコンがある中で、「うちなんて下請け中小企業だよ」と話す社長の会社の財務状態が非常に良く、社長は高級腕時計をつけている、なんてこともあります。
かつて昭和のころは「専属下請け」と呼ばれ、一社の元請けからしか仕事を請けない一次請け、二次請けが多かったのですが、今は複数の元請けを「掛け持ち」する会社が増え、「付き合う元請けを選んで」いるのです。
出典
- 高木健次著『建設ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング 2025年1月刊)より抜粋
- https://www.amazon.co.jp/dp/4295410551