地方銀行は融資や預金以外に何をしている? ネット銀行・観光・地域商社など8つの取り組み
地方銀行やそのグループは、融資や預金で築いた地域との関係を、デジタルサービス、商品開発、観光、企業同士の商談にも生かしています。ふくおかフィナンシャルグループは「みんなの銀行」を立ち上げ、池田泉州銀行は阪急阪神グループとネット銀行サービスを計画。四国の4行は地域商社を共同で設立しました。本記事では、スタートアップと地域企業を結ぶイベントや、北海道と北陸をまたぐビジネスマッチング、10行が独立性を保って協力するTSUBASAアライアンスまで、8つの取り組みを紹介します。銀行ごとの活動を通して、地域で長く築いてきた取引先との関係が、金融以外の仕事にどうつながっているのかを見ていきます。
Q&A
Q1地方銀行がネット銀行をつくった例はありますか?
ふくおかフィナンシャルグループが2021年に始めた「みんなの銀行」があります。スマートフォンだけで利用でき、2026年5月には170万口座を突破しました。
Q2銀行が地域の商品開発や販売に関わることはありますか?
あります。四国4行が共同設立したShikokuブランドや、大分銀行が出資・支援するOita Madeは、地域の商品開発や販路開拓などを手がけています。
Q3地方銀行はスタートアップとどのように関わっていますか?
静岡銀行は静岡県とともに「TECH BEAT Shizuoka」の事務局を務め、スタートアップと地域企業の商談を支援しています。2025年には約170社のスタートアップが参加しました。
Q4地方銀行は合併せずに連携できますか?
TSUBASAアライアンスでは、千葉銀行など10行が独立性を保ちながら、事務・システムの共同化や相続関連業務、シンジケートローンなどで協力しています。
地方銀行の仕事は、預金を預かり、地元の企業や個人にお金を貸すこと。そう思って調べてみると、旅行会社への出資や商品の開発・販売、鉄道会社とのサービスづくりなど、銀行窓口の外に広がる事業が見つかります。
地方銀行はかつて、地域を代表する企業であり、地元で人気の就職先でもありました。今は人口減少に加え、ネット銀行の台頭、キャッシュレス決済の普及、異業種の金融参入によって、競争する相手も変わっています。
そのなかで各行が生かしているのが、地域の企業や人との長い付き合いです。顧客に販路を紹介する、外部の技術を持つ企業をつなぐ、ほかの銀行と事業を共同で進める。8つの取り組みから、地銀の仕事の広がりを見ていきます。
ふくおかフィナンシャルグループ
ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)は2021年、スマートフォンだけで利用できるデジタルバンク「みんなの銀行」をスタートさせました。福岡を地盤とする地銀グループがつくった銀行ですが、利用者は全国に広がり、2026年5月には170万口座を突破しています。
さらに、外部企業のサービスに自社の銀行機能を組み込んでもらう「BaaS(Banking as a Service)」にも取り組んでいます。既存銀行のデジタル化にとどまらず、新しい銀行をつくり、その機能をほかの会社にも提供する試みです。
池田泉州銀行
池田泉州銀行、阪急阪神ホールディングス、阪急阪神カードの3社は、2026年2月、BaaSを活用したネット銀行サービスの計画を発表しました。「(仮称)Hankyu Hanshin cross BANK(阪急阪神ネットバンク)」として、関係当局の許認可などを前提に2027年以降の開始を予定しています。
阪急阪神グループの事業は、鉄道に加え、不動産、旅行、エンタテインメントにも広がります。こうした生活に近いサービスと銀行機能を組み合わせることで、銀行には支店以外で顧客と接する機会が生まれます。
静岡銀行
「TECH BEAT Shizuoka」は、スタートアップと地域企業を結ぶビジネスマッチングイベントです。実行委員会が主催し、静岡県と静岡銀行が事務局を務めています。
2019年に始まり、7年目の2025年には国内外から約170社のスタートアップが参加しました。過去最大規模の開催です。
新しい技術やサービスを持つ企業と、課題を抱える地域企業が商談できる場をつくる。融資や投資に加え、地域で築いた取引先との関係を、企業同士の出会いに生かしています。
Shikokuブランド
阿波銀行、百十四銀行、伊予銀行、四国銀行は、2020年に地域商社「Shikokuブランド」を設立しました。資本金は1億円で、4行が25%ずつ出資しています。銀行法上の「銀行業高度化等会社」として設立された会社です。
地域商品の販売に加え、商品開発、ブランディング、販路開拓も支援します。それぞれの営業地域で商品を売るだけでなく、4行の取引先との関係を持ち寄り、四国全体のブランド力を高めようとしています。
Oita Made
地域商社「Oita Made」は2017年に設立され、大分銀行が出資して設立時から支援してきました。資本金は2,000万円。大分銀行は行員2人を派遣し、経営も支えました。
県内の素材を商品化して国内外に販売するほか、地域ブランド商品の企画開発やマーケティングを手がけています。旅行商品などを扱うランドオペレーター業務、まちづくり、新しい事業を生み出す支援にも関わっています。
商品をつくって売り、観光へつなげる。地域のモノと体験を事業にするところまで、銀行の支援先の仕事は広がっています。
たびまちゲート広島
「たびまちゲート広島」は2002年設立の旅行会社です。2019年に広島銀行の出資を受けて地域商社事業部を設け、2021年に現在の社名へ変更しました。
旅行事業と並行して、地域の商品開発や販売にも取り組んでいます。会社概要に記載された正社員数は41人。旅行業登録を持ち、JR6社、日本航空、全日空などの委託代理店でもあります。
旅行で人を呼ぶ仕事と、地域の商品を届ける仕事が同じ会社にあります。訪れた人に土地の魅力を知ってもらうことも、地域経済を支える方法の一つです。
ほくほくフィナンシャルグループ
北海道銀行と北陸銀行は、同じほくほくフィナンシャルグループに属しています。離れた地域の企業同士をつなぐ手段の一つが、ビジネスマッチングです。
2023年には両行のシステムを統合し、「ほくほくビジネスマッチングシステム」の運用を始めました。両行の取引企業の情報を生かして、銀行の垣根を越えて企業のニーズを探せます。
販売先を増やしたい北海道の企業と、仕入先を探す北陸の企業を結ぶ。こうした商談の機会づくりにも、長年の取引先との関係が役立ちます。
TSUBASAアライアンス
千葉銀行など10行が参加する「TSUBASAアライアンス」は、各行が独立性を保ったまま連携する取り組みです。2015年の発足後に参加行を増やし、フィンテック、事務・システムの共同化、相続関連業務、複数行が協調して融資するシンジケートローンなどで協力しています。
2026年3月末時点の10行合計では、総資産100兆円、預金79兆円、貸出金63兆円。法人顧客は216万先、個人顧客は約2,300万人にのぼります。
合併をせずに、それぞれの営業基盤を残して一緒にできる業務を広げる。地銀が規模を生かす方法には、こうした連携もあります。
地元の商品や旅の後ろにも、銀行がいる
大分の素材を商品にするOita Made、旅行と地域商社の機能を持つたびまちゲート広島、四国4行が共同でつくったShikokuブランド。銀行からの支援が、店頭に並ぶ商品や地域を訪れる旅につながっています。
銀行が長く付き合ってきた企業には、売りたい商品や解決したい課題があります。その相談先として築いた関係を、融資に加えて販路や技術の紹介にも使う。地銀の仕事を知るなら、店舗や金融商品の先にある、こうした支援先の事業も手がかりになります。