iPhoneを支える日本企業にはどこがある? 部品・素材・製造装置で知る15社の技術
iPhoneをはじめとするApple製品には、カメラや電子部品から、基板、フィルム、接着材料、製造装置まで、多くの日本企業が関わっています。Appleによれば、日本のサプライヤーは約1,000社。本記事では、そのうち代表的な15社を、得意とする技術から紹介します。ソニーのイメージセンサー、村田製作所のMLCC、コネクタを小型化する日本航空電子工業やヒロセ電機、外装や製造工程を支える企業などが登場します。各社の技術を見渡したうえで、再生可能エネルギーへの取り組みも取り上げます。なお、Appleはすべての採用品目を公開していないため、各社の代表的な技術と、iPhoneへの採用が公表された内容は区別しています。
Q&A
Q1iPhoneのカメラには日本企業の技術が使われていますか?
Appleによれば、ソニーは2011年からiPhone用のカメラセンサーを製造しています。iPhone 14 Proの4,800万画素のメインカメラにもソニーのセンサーが採用されました。
Q2Apple製品を支える日本のサプライヤーは何社ありますか?
Appleによれば約1,000社です。本記事では部品、素材、製造装置などに関わる15社を紹介しています。ただし、すべてのサプライヤーがiPhone専用の製品を供給しているわけではありません。
Q3MLCCやFPCは、どんな部品ですか?
MLCCは電気を安定させるために使う積層セラミックコンデンサで、村田製作所や太陽誘電が手がけています。FPCは薄く曲げられる電子回路基板で、日本メクトロンなどが製造しています。
Q4完成品の部品以外でもApple製品に関わる企業はありますか?
あります。シンクロンはApple製品の保護コーティングに使う機器を設計・開発・製造しています。素材や部品を供給するだけでなく、製造工程を支える企業もあります。
iPhoneのカメラで写真を撮るとき、その光を受け取っているのはどの会社の部品でしょうか。完成品にはAppleの名前があっても、内部の部品や素材、製造に使う機械には、別の企業の技術が使われています。
Appleによれば、日本には約1,000社のサプライヤーがあり、2018年以降、日本のサプライヤーネットワークに1,000億ドル以上が投資されています。カメラ、コネクタ、基板、素材、製造装置と、関わる仕事もさまざまです。
ここでは、Appleが日本のサプライヤーとして公表している企業を中心に、15社の主な技術を紹介します。
15社はどんな技術を持っている?
| 分野 | 企業 | 主な技術・役割 |
|---|---|---|
| カメラ | ソニーグループ | イメージセンサー |
| センサー | TDK | センサー・電子部品 |
| 電子部品 | 村田製作所 | MLCC |
| 電子部品 | 太陽誘電 | MLCCなど |
| 接続 | 日本航空電子工業 | コネクタ |
| 接続 | ヒロセ電機 | コネクタ |
| 基板 | 日本メクトロン | FPC |
| センサー・電子部品 | アルプスアルパイン | センサー・電子部品 |
| 素材 | 京セラ | ファインセラミックスなど |
| フィルム・材料 | 日東電工 | 光学フィルム・偏光板など |
| 機能性材料 | デクセリアルズ | 接着・光学材料 |
| 電子・通信 | フジクラ | 電子・通信関連 |
| 電子・通信 | 住友電気工業 | 電子・通信関連 |
| 外装 | セイコーアドバンス | インク・コーティング材料 |
| 製造装置 | シンクロン | コーティング装置 |
※表は各社の主な技術・役割を整理したものです。Appleは個別企業のすべての採用品目を公開しておらず、表に挙げた製品がすべてiPhone向けとは限りません。
カメラやセンサーで、光や動きを捉える
ソニーグループ
カメラに入った光を電気信号に変える半導体が「イメージセンサー」です。Appleによれば、ソニーは2011年からiPhone用のカメラセンサーを製造しています。iPhone 14 Proの4,800万画素(48MP)のメインカメラにも、ソニーのセンサーが採用されました。
TDK
TDKはAppleと30年以上にわたって協業している電子部品メーカーです。センサーや電子部品、繰り返し充電して使える二次電池など、スマートフォンに使われるさまざまな技術を持っています。2026年春には、Apple製品向けの高性能センサーを米国内で生産開始すると発表しました。
小さな電子部品で、電気を安定させる
村田製作所
村田製作所を代表する製品の一つが、電気を安定させるために使う「積層セラミックコンデンサ(MLCC)」です。スマートフォンなどの電子機器に欠かせない部品で、同社は世界シェア約40%を持つトップメーカーです。
太陽誘電
太陽誘電もMLCCなどの電子部品を手がけています。スマートフォンを小さく、高性能にするには、中に入る部品も小さくする必要があります。限られた場所に収めながら必要な性能を出す技術が、端末の設計を支えます。
部品をつなぐコネクタにも、小型化の技術がある
日本航空電子工業
日本航空電子工業(JAE)は、コネクタなどの電子部品を製造しています。スマートフォン向けには、0.4mmピッチ、接続時の高さ0.7mmという小型コネクタも開発。小さなサイズで最大15Aの電流に対応しています。
ヒロセ電機
ヒロセ電機はコネクタで知られる企業です。スマートフォンやウェアラブル機器向けには、高さ0.5mm、端子間隔0.175mmのFPCコネクタもあります。目に入りにくい接続部分でも、小型化が進んでいます。
曲がる基板と、端末の状態を知るセンサー
日本メクトロン
日本メクトロンは、フレキシブルプリント基板(FPC)を手がけています。薄く、曲げられる電子回路基板で、スマートフォンの内部など、限られたスペースに部品を収めるのに役立つ技術です。
アルプスアルパイン
アルプスアルパインは、センサーや電子部品を幅広く製造しています。スマートフォンには、端末の動きや状態、周囲の環境を検知するために、さまざまなセンサーが搭載されています。
フィルムや接着材料で、光と部品を扱う
京セラ
京セラの強みの一つは、耐熱性、耐久性、電気的な特性などに優れたファインセラミックスです。この素材技術を生かし、電子部品や半導体関連部品などを手がけています。
日東電工
日東電工は、テープや粘着材料に加え、電子機器やディスプレイ向けの高機能フィルムも開発しています。Appleによれば、20年以上にわたり協業し、複数のApple製品向けにディスプレイ用偏光板を生産しています。
デクセリアルズ
デクセリアルズは、接着剤や光学材料などの機能性材料を手がける会社です。精密な電子機器では、部品の固定方法や光の制御も性能に関わります。こうした働きを担うのが、同社の素材技術です。
電力や信号を、必要な場所へ届ける
フジクラ
フジクラは、電線や光ファイバーなどで知られています。電子機器の内部で電力や信号を正確に伝える技術も、製品づくりには欠かせません。
住友電気工業
住友電気工業は、電線や自動車用ワイヤーハーネスなどを手がけています。電子・通信分野にも事業を広げ、Appleを支える日本企業の一社に数えられます。
外装の色や、製造工程にも日本企業の技術
セイコーアドバンス
セイコーアドバンスは、電子機器などに使う高機能インクやコーティング材料を手がけ、iPhoneの色や質感に関わっています。カメラや半導体だけでなく、手に取ったときに見える外装にも、専門の技術があります。
シンクロン
シンクロンは、真空薄膜形成装置などを手がけています。Appleによれば、Apple製品の保護コーティングに使う高性能な機器を設計・開発・製造しています。完成品に部品として残らなくても、製造工程を通じて関わる企業があります。
再生可能エネルギーへの対応も求められる
Appleはサプライヤーにも、再生可能エネルギーへの移行を促しています。2025年の発表では、世界のサプライチェーンで17.8GWの再生可能電力が利用可能となり、2024年には2,180万トンの温室効果ガス排出を回避したとしています。
日本でもソニー、村田製作所、セイコーアドバンス、フジクラ、日本メクトロン、住友電気工業などが導入を進めています。Appleは2022年時点で、2030年までにApple製品の製造を100%再生可能エネルギーで行うと表明した日本のサプライヤーが29社あると紹介しました。
求められるのは部品や素材の性能に加え、それを製造する過程での環境対応です。各社の事業を見る際には、工場で使う電力にも注目できます。
手のひらの端末から、製造装置までたどってみる
写真を撮るセンサー、曲げられる基板、外装の色をつくる材料、保護コーティングを施す装置。iPhoneを入り口にたどると、普段は名前を目にしない企業の仕事が出てきます。
AppleのサプライヤーがすべてiPhone専用というわけではなく、各社の採用品目もすべて公開されているわけではありません。それでも、毎日使う端末の「撮る」「つなぐ」「色をつける」といった機能や工程から調べれば、企業が得意とする技術が、身近な製品と結びついて見えてきます。