宇宙開発を支える日本企業にはどこがある? 空気・電源・カメラ・月面の車に関わる10社

宇宙開発には、ロケットを飛ばす技術に加えて、人が呼吸するための空気、機器を動かす電源、地上と情報を交わす通信などが欠かせません。日本でも、三菱重工業や三菱電機から、ニコン、トヨタ自動車、ブリヂストンまで、異なる分野の企業が関わっています。本記事では、国際宇宙ステーション「きぼう」での実績や月探査に向けた開発を通じて、10社の仕事を紹介します。生命維持、熱制御、ロボット、建設、運用など、担当する役割から各社の技術を見ていきます。月探査計画は見直しが進んでいるため、これまでの開発実績と今後の予定を区別して読むことも大切です。

Q&A

Q1ロケットメーカー以外にも宇宙開発に関わる日本企業はありますか?

あります。月面用カメラを開発するニコン、有人与圧ローバーに取り組むトヨタ自動車、月面向けタイヤを研究するブリヂストンなど、地上の製品で知られる企業も参加しています。

Q2宇宙で人が活動するには、どんな技術が必要ですか?

酸素の供給や二酸化炭素の除去、温度の制御、電力の確保、通信、ロボット、移動手段、地上からの運用支援などが必要です。本記事では、それらに関わる10社を紹介しています。

Q3「きぼう」のロボットアームにはどの企業が関わっていますか?

親アームはNEC、親アームの先端に取り付けて細かな作業を行う子アームは日立製作所が担当しました。

Q4Gatewayの計画は現在どうなっていますか?

NASAは2026年3月、Gatewayの現行計画を一時停止し、月面で継続的に活動するための設備へ重点を移す方針を発表しました。本記事では、この変更と日本企業がこれまで担ってきた開発を区別して紹介しています。

月で人が活動するには、何が必要でしょうか。まず思い浮かぶのはロケットですが、到着した後にも仕事は待っています。空気を用意し、機器の温度を保ち、電力を蓄える。離れた場所へ移動するための車も必要です。

NASAが主導する国際月探査「アルテミス計画」では、2027年のアルテミスIIIで月面着陸に向けた技術実証を行い、アルテミスIVで2028年の有人月面着陸を目指しています。2026年4月にはアルテミスIIが実施され、4人の宇宙飛行士が月の近くを巡って地球へ帰還しました。

日本もJAXAを通じて計画に参加しています。月周回有人拠点「Gateway」に向けては生命維持、熱制御、バッテリーなどを開発し、HTV-Xによる物資補給にも取り組んできました。ただしNASAは、2026年3月にGatewayの現行計画を一時停止し、月面で継続的に活動するための設備へ重点を移す方針を発表しています。

ここでは、月探査に向けた開発と、国際宇宙ステーション(ISS)で積み重ねてきた実績の両方から、日本企業の仕事を見ていきます。

三菱重工業

ロケットや宇宙機を開発・製造する三菱重工業は、Gateway向けの環境制御・生命維持システムも担当してきました。酸素を供給し、二酸化炭素を取り除くなど、人が宇宙で暮らすための空気を支える技術です。

三菱電機

人工衛星などの宇宙システムを手がける三菱電機は、Gateway向けの宇宙用バッテリーの開発に関わってきました。太陽光発電だけでは電力を賄えない時間帯にも、蓄えた電気で機器を動かす役割を担います。

IHI

宇宙では、機器を適切な温度に保つことが欠かせません。IHIは航空・宇宙分野で培った技術を生かし、宇宙機の熱制御などを手がけています。機器が正常に働ける温度を保つことも、宇宙での活動を支える仕事です。

NEC

NECは通信やコンピューターの技術を生かし、ISSの日本実験棟「きぼう」のロボットアームのうち、親アームを担当してきました。通信・コンピューターシステムにも関わり、宇宙で機器を動かす制御と、地上との情報のやり取りを支えています。

日立製作所

日立製作所が担当したのは、「きぼう」のロボットアームのうち、親アームの先端に取り付ける子アームです。宇宙空間で機器を交換するなど、細かな作業に使われます。人が直接作業しにくい場所でも、ロボットなら手を伸ばせます。

コマツ

建設機械メーカーのコマツは、月面での建設やインフラ整備を見据えた研究を進めています。月面環境を再現した実証などを通じて、建設機械の自動化・遠隔化や掘削技術を研究。地上の工事で培った技術を、月でも使えるようにする試みです。

ニコン

ニコンとNASAの関わりは、1971年のアポロ15号にさかのぼります。現在は「ニコン Z 9」をベースにした月面用カメラをNASAと共同開発しています。厳しい環境でも撮影できるカメラで、宇宙飛行士の活動や月面の風景を記録します。

有人宇宙システム

宇宙機の仕事は、打ち上げた後も続きます。有人宇宙システム(JAMSS)は「きぼう」の運用支援などを通じて、地上から宇宙を支えてきました。宇宙機の状態を監視し、関係機関と連携しながら、安全に運用できるよう支援しています。

トヨタ自動車

トヨタ自動車はJAXAとともに、有人与圧ローバー「Lunar Cruiser」の開発を進めています。人が乗る空間の圧力を保ち、月面を移動しながら活動できる車です。地球とは重力も地形も異なる場所で、「走る居住空間」の実現を目指しています。

ブリヂストン

月面を走るには、タイヤにも専用の技術が必要です。ブリヂストンは月面モビリティの開発に取り組み、トヨタの有人与圧ローバーの研究にも参加してきました。月の砂「レゴリス」や極端な温度変化など、地球とは異なる環境に対応するタイヤを研究しています。

カメラやタイヤの先にも、宇宙の仕事がある

JAXAは、宇宙開発を幅広い関連産業が関わる総合産業と説明しています。人工衛星やロケットだけでなく、部品、素材、地上設備、ソフトウェア、運用まで仕事がつながっているためです。

ニコンのカメラ、コマツの建設機械、ブリヂストンのタイヤ。地上で身近な製品をつくる技術が、月で人が活動するための開発に使われています。宇宙飛行士になる以外にも、宇宙に関わる道はあります。自分が学んでいる技術や、勤める会社の製品からたどってみると、宇宙への接点が見つかるかもしれません。