保険会社は自動車や火災以外に何を守っている? 宇宙・サイバー・ペットなどに取り組む10社
保険会社の仕事は、自動車事故や火災への補償から、宇宙開発、サイバー攻撃、ドローンなどへ広がっています。事故の後に保険金を支払うだけでなく、走行データを使って安全運転を促す、現場に駆けつける、ペットの健康管理を支援するといった取り組みもあります。本記事では、損保ジャパン、三井住友海上、あいおいニッセイ同和損保など10社を紹介。テレマティクス自動車保険の契約台数や、ペット保険の保有契約件数、歩行距離で変わる登山保険の保険料などから、各社の仕事を見ていきます。巨大地震に備える再保険も含め、企業や暮らしのどんなリスクに向き合っているのかを整理します。
Q&A
Q1宇宙ビジネスにも保険はありますか?
あります。損保ジャパンは、人工衛星などの打ち上げ前・打ち上げ時・軌道上での損害や、ロケット・人工衛星の運用による第三者への賠償責任に対応する宇宙保険を扱っています。
Q2保険会社は事故を防ぐ仕事もしていますか?
三井住友海上はAIスマートカメラなどで異常を検知するサービスを展開し、あいおいニッセイ同和損保は走行データを安全運転の促進に活用しています。アニコム損保には、ペットの健康管理を支援する取り組みもあります。
Q3歩いた距離で保険料が変わる登山保険はありますか?
ヤマップネイチャランスの「山歩保険」があります。YAMAPアプリで計測した山での年間歩行距離によって追加保険料が変わり、年間100km程度の保険料は合計約3,370円、上限は約5,350円です。
Q4地震による火災は、火災保険だけで補償されますか?
通常の火災保険では補償されません。火災保険に地震保険を付帯して備える仕組みです。地震保険は政府と民間の損害保険会社がリスクを分担し、日本地震再保険も再保険を通じて制度を支えています。
人が運転しないタクシーで事故が起きたら、誰が責任を負うのでしょうか。AIを使ったサービスでトラブルが起きたとき、あるいはサイバー攻撃でシステムが止まったとき、事業をどう立て直すのでしょうか。
GO、Waymo、日本交通の3社は、2027年中に東京で完全無人のレベル4自動運転タクシーを商用運行することを目指しています。小規模で始め、段階的に約100台へ広げる計画です。技術が変わると、事故の起こり方や備え方も変わります。
地震や豪雨への備えも欠かせません。豪雨による洪水・浸水・土砂災害などは、火災保険で水災を補償する契約の対象になる場合があります。一方、地震・噴火・津波による損害は通常の火災保険では補償されず、地震保険で備える仕組みです。
こうした新旧のリスクに、保険会社はどう向き合っているのでしょうか。10社の取り組みを紹介します。
損保ジャパン
損害保険ジャパンは、宇宙ビジネスのリスクにも取り組んでいます。人工衛星などの損害を補償する宇宙保険には、打ち上げ前、打ち上げ時、軌道上での運用と、段階に応じた商品があります。ロケットや人工衛星の運用で第三者に損害を与えた場合の賠償責任にも対応しています。
2024年には宇宙保険の特設サイトを開設しました。新しい産業にどんな事故や損失があり得るかを考え、事業者が備えられる商品をつくることも、保険会社の仕事です。
三井住友海上
三井住友海上は、AIやIoTの普及に伴うリスクに、保険とリスクマネジメントの両面から対応しています。
たとえば、AIスマートカメラなどのIoTを使い、異常を検知するサービスがあります。利用者が異変に気づき、対応するきっかけをつくる仕組みです。保険金を支払う前の段階で、事故やトラブルを防ぐ仕事にも取り組んでいます。
あいおいニッセイ同和損保
あいおいニッセイ同和損保が力を入れているのは、走行データなどを活用するテレマティクス自動車保険です。2025年3月には契約台数が200万台を突破しました。
走行データを安全運転の促進や事故後の対応に役立てています。人が運転する車でも、データを使うことで保険ができることは増えます。さらに、2027年に東京で計画されている完全無人タクシーのようなサービスが広がれば、自動車保険で捉えるリスクも変わっていくでしょう。
東京海上日動
東京海上日動は、ドローンのレベル4飛行が可能になったことを背景に、「被害者支援費用担保特約」を開発しました。ドローンで第三者に損害が生じた場合などに、迅速な被害者支援につなげるための仕組みです。
物流、点検、測量、災害対応と、ドローンの使い道は多岐にわたります。社会で使う場面が増えるほど、事故が起きた後の対応まで用意しておく必要があります。
AIG損保
火災や設備事故に加え、情報漏洩、システム停止、ランサムウェアも企業の事業を脅かします。
AIGは1999年に米国でサイバーセキュリティ保険プログラムを立ち上げました。日本では2012年に「CyberEdge」の販売を開始しています。
「CyberEdge」は、情報漏洩による賠償責任のほか、デジタル機器の記録を調べるフォレンジック調査の費用、ネットワーク中断、ランサムウェアによる事業中断、サイバー犯罪による損失などを補償の対象としています。被害の調査や、止まった事業への備えも含む保険です。
アニコム損保
ペット保険を専門にするアニコム損保の「どうぶつ健保」は、2026年7月に保有契約件数140万件を突破しました。
病気やケガの補償に加えて、ペットの健康状態をチェックするサービスにも取り組んでいます。病気になってからの費用だけでなく、日頃の健康管理も支援しています。
ヤマップネイチャランス
登山地図・GPSアプリ「YAMAP」を運営するグループの保険会社が、ヤマップネイチャランスです。同社の「山歩保険」は、アプリで計測した山での年間歩行距離に応じて、追加保険料が変わります。
年間100km程度なら、保険料の合計は約3,370円。年間の上限は約5,350円です。登山する人の行動データを、登山に合う保険の仕組みに生かしています。
セコム損保
セキュリティ会社を母体とするセコム損保は、自動車保険で「現場急行サービス」を提供しています。契約者からの要請を受け、セコムの緊急対処員が24時間365日、事故現場へ駆けつけます。
現場では、安全確保、ケガや事故状況の確認などを支援します。補償に加えて、事故の直後に人が手助けする。セコムの事業基盤を生かしたサービスです。
日本地震再保険
地震保険は、政府と民間の損害保険会社がリスクを分担する制度です。日本地震再保険は、損害保険会社が引き受けた地震保険の責任を、再保険で引き受けています。保険会社を支える保険を担う会社です。
地震による火災や損壊は、通常の火災保険では補償されません。地震保険は火災保険に付帯して加入し、保険金額は火災保険金額の30~50%。限度額は建物5,000万円、家財1,000万円です。
一度に広い範囲で被害が起きる地震に備えるには、保険を販売する会社だけでなく、その責任を分担する仕組みが必要になります。
au損保
au損保は通信・デジタルとの接点を生かし、自転車、ペット、旅行、ゴルフなど、日常に近い保険を展開しています。
自転車向け保険では、事故で相手に負わせた損害の賠償と、自分のケガに備える商品を用意しています。サイクルベースあさひと共同開発した「サイクルパートナー」は月々180円から。個人賠償責任補償は2億円で、示談代行サービスも付いています。
※保険料・補償内容は紹介した商品の条件に基づくものです。実際の補償範囲は契約内容や特約によって異なります。
事故の前にも、現場にも、保険会社の仕事がある
走行データで安全運転を促し、事故が起きれば現場へ駆けつける。サイバー攻撃では調査や事業中断に備え、衛星では打ち上げの前後で異なるリスクを引き受ける。10社の仕事をたどると、保険金の支払いに至るまでにも、その先にも、支援があることがわかります。
自動運転やAIなどの新しい技術にも、地震や豪雨にも、「どこで、誰に、どんな損失が起きるのか」という問いは共通します。保険会社の事業を知るには、商品名とともに、その会社が向き合う事故や暮らしの場面にも目を向けてみてください。