なぜ地方発のドラッグストアは強い? コスモス・クスリのアオキなど7社の成長戦略を比較

地方から成長したドラッグストアには、小さな商圏を狙う企業もあれば、M&Aや大型店舗を強みにする企業もあります。コスモス薬品は小商圏への大型店出店と店舗の標準化、クスリのアオキはM&Aを活用した広域展開、ゲンキーは店舗運営の標準化と効率化を進めてきました。本記事では、この3社に薬王堂、カワチ薬品、V・drug、ザグザグを加えた7社の売上高・店舗数と戦略を比較します。地域に店舗を集中させる方法、グループの経営資源を使う方法、地元でブランドを築く方法など、数字の背景にある各社の選択を読み解きます。なお、売上高や店舗数の決算期・基準日は各社で異なります。

Q&A

Q1地方発のドラッグストアは、なぜ成長できるのですか?

小商圏への出店、店舗の標準化、M&A、大型店舗、グループの経営資源、地域ブランドなど、自社に合った戦略を選んでいるためです。地方発という共通点があっても、7社の成長の仕方は異なります。

Q2コスモス薬品とゲンキーの成長戦略はどう違いますか?

コスモス薬品は、小さな商圏にも幅広い商品を扱う大型店を出し、標準化した店舗モデルを他地域へ広げてきました。ゲンキーも標準化と効率化を重視し、福井・石川・岐阜・愛知・滋賀の5県に集中して店舗網を広げています。

Q3M&Aを活用して成長しているドラッグストアはどこですか?

本記事で紹介するクスリのアオキは、スーパーマーケットなどを取り込みながら新しい地域へ進出しています。既存の店舗や人材、その地域のノウハウを活用できることが特徴です。

Q4地域に店舗を集中させると、どんな利点がありますか?

物流や店舗運営を効率化し、地域での知名度も高めやすくなります。薬王堂は東北を中心に、特定の地域へ店舗を集中させるドミナント戦略を進めています。いあい

ドラッグストア業界では、マツモトキヨシ、ウエルシア、スギ薬局、ツルハドラッグなど、全国に店舗を展開する大手企業の存在感が高まっています。

その一方で、地方から成長し、独自の存在感を発揮する企業も少なくありません。

宮崎県発のコスモス薬品、石川県発のクスリのアオキ、福井県発のゲンキー、岩手県発の薬王堂――。

興味深いのは、これらの企業が同じような方法で成長しているわけではないことです。小さな商圏を狙う企業もあれば、M&Aを活用して新しい地域へ進出する企業もあります。店舗を徹底的に標準化して効率化する企業、大型店舗を強みにする企業、地元でブランドを築く企業もあります。

同じドラッグストアでも、その戦い方はさまざまです。今回は、地方発のドラッグストア7社を比較しながら、それぞれがどのような戦略で成長してきたのかを見ていきます。

地方発ドラッグストア7社の売上高・店舗数と成長戦略

企業発祥地売上高店舗数主な成長戦略
コスモス薬品宮崎県1兆998億円1,717店小商圏+標準化
クスリのアオキ石川県5,668億円1,000店超M&A+広域展開
カワチ薬品栃木県2,844億円386店大型ロードサイド
ゲンキー福井県2,206億円540店標準化+高速出店
V・drug岐阜県1,834億円571店グループ戦略
薬王堂岩手県1,638億円456店小商圏+地域深耕
ザグザグ岡山県1,053億円232店地域ブランド

※売上高・店舗数は各社の最新公表値をもとに作成。決算期・基準日は各社で異なります。

こうして並べると、地方発企業でありながら、売上高1兆円、店舗数1,000店を超える企業もあります。では、それぞれの企業はどのような戦略で成長してきたのでしょうか。

1.コスモス薬品

宮崎県発のコスモス薬品は、地方発ドラッグストアの代表的な存在です。2026年5月期の売上高は1兆998億円。店舗数は2026年8月末時点で1,717店舗に達しています。

同社の特徴は、「小商圏型メガ・ドラッグストア」という独自の出店戦略です。一般的には、人口の多い地域に大型店を出店し、小さな商圏には小型店を出すという考え方がありますが、コスモス薬品は比較的小さな商圏にも、幅広い商品を扱う大型店舗を展開してきました。

その成長を支えているのが、店舗運営の標準化です。店舗の仕組みをできるだけ統一することで、新しい地域でも同じような店を展開しやすくなります。

小商圏を狙う × 店舗を標準化する。このモデルを九州から関西、関東へと広げ、売上高1兆円企業へ成長してきました。

2.クスリのアオキ

石川県発のクスリのアオキは、北陸から関東、東海、近畿、東北へと店舗網を広げています。2026年5月期の売上高は5,668億円です。

同社の特徴は、新規出店だけでなく、M&Aも活用していることです。新しい地域へ進出する場合、通常は土地を探し、店舗をつくり、人材を採用する必要があります。一方、M&Aでは、すでにその地域で事業を展開している企業を取り込むことで、店舗や人材、地域のノウハウを活用できます。

クスリのアオキは、スーパーマーケットなども取り込みながら、新しい地域への進出を進めてきました。

自分たちだけで店舗を増やすのではなく、地域企業の力も取り込みながら成長する。これが、クスリのアオキの大きな特徴です。

3.ゲンキー

福井県発のゲンキーは、北陸から東海へと店舗網を広げてきました。2026年6月期の売上高は2,206億円。2026年9月時点の店舗数は540店舗です。

同社の成長を支えているのが、店舗の標準化と効率化です。店舗ごとに売り場や運営方法が大きく違えば、新しい店をつくるたびに多くの時間とコストがかかります。

店舗のレイアウトやオペレーションを標準化すれば、成功した店舗の仕組みを繰り返し使い、新しい店を効率よく増やせます。ゲンキーは、良い店をつくることに加え、その店を増やす仕組みを重視してきました。

現在は福井、石川、岐阜、愛知、滋賀の5県に集中して出店。全国へ一気に広げるのではなく、特定エリアで店舗網を広げています。

4.薬王堂

岩手県発の薬王堂は、東北を中心に成長してきたドラッグストアです。2026年2月期の連結売上高は1,638億円。期末の店舗数は456店舗です。

同社の特徴は、人口規模が比較的小さい地域にも積極的に出店してきたことです。一般的なチェーンが人口の多い都市部を中心に出店する一方、薬王堂は地方の小商圏にも目を向けてきました。

さらに、特定の地域に店舗を集中させる「ドミナント戦略」も進めています。店舗を集中的に展開することで、物流や店舗運営を効率化し、地域での知名度も高めやすくなります。

全国へ一気に広がるのではなく、まずは東北で強い存在になる。

東北の地域に根差し、店舗網を充実させることで成長してきた企業です。

5.カワチ薬品

栃木県発のカワチ薬品は、北関東を代表するドラッグストア企業です。2026年3月期の売上高は2,844億円。ドラッグストアは386店舗を展開しています。

同社の大きな特徴は、「メガ・ドラッグストア」と呼ばれる大型店舗です。小商圏に対応したコンパクトな店舗を増やす企業もある中、カワチ薬品は、一店舗を大きくするという戦略を選びました。

広い売り場と駐車場を備えた大型店は、車で買い物をする生活スタイルとの相性が良いといえます。特に北関東や東北では、車で店舗を訪れ、必要なものをまとめて購入する人も少なくありません。

カワチ薬品は、「大型店で地域の需要をまとめて取り込む」という独自のポジションを築いてきました。

6.V・drug

岐阜県発のV・drugは、バローグループの一員です。2026年3月期の売上高は1,834億円。2026年3月末時点で571店舗を展開しています。

同社の強みの一つが、バローグループの経営資源を生かせること。バローグループには、スーパーマーケットやホームセンターなど、さまざまな事業があります。V・drugも、グループの物流や仕入れ、店舗開発などの基盤を生かしながら店舗網を広げています。

V・drugは、グループ全体の力を生かしながら店舗網を広げています。地方発ドラッグストアには、こうしたグループ戦略による成長の道もあります。

7.ザグザグ

岡山県発のザグザグは、中国・四国エリアを中心に店舗を展開しています。2025年8月実績の年商は1,053億円。2026年9月現在は232店舗を展開しています。

同社の特徴は、地域での高い知名度とブランド力です。全国各地へ積極的に出店する企業もありますが、全国展開だけが成長ではありません。特定の地域で、「ドラッグストアといえば、この企業」と思ってもらえることも、大きな競争力になります。

ザグザグは岡山県を中心に長年店舗を展開し、地域での存在感を高めてきました。また、調剤薬局や介護事業などにも取り組んでいます。地方企業だからこそ、地域との距離の近さを強みに変える。中四国を中心にブランドを築きながら、売上高1,000億円を超える規模へ成長していることも、ザグザグらしい特徴です。

地方発でも、成長のかたちはさまざま

今回紹介した7社を比べると、地方発ドラッグストアの成長には、さまざまなかたちがあることがわかります。

コスモス薬品や薬王堂は小商圏を重視していますが、コスモス薬品が独自の店舗モデルを他地域へ広げてきたのに対し、薬王堂は東北を中心に地域を深掘りしてきました。ゲンキーは店舗の標準化、クスリのアオキはM&A、カワチ薬品は大型店舗、V・drugはグループの力、ザグザグは地域ブランドと、それぞれ異なる方法で成長しています。

つまり、「地方発ドラッグストア」という共通点があっても、その戦い方は同じではありません。地元で強い存在になるのか、地元で成功したモデルを他地域へ広げるのか。その選択も含めて、各社が自分たちに合った成長戦略をつくっているのです。

強さの理由は「自分たちの戦い方」があること

ドラッグストアは、どの企業も似たような店に見えるかもしれません。しかし、成長戦略に目を向けると、その中身は大きく異なります。

小さな商圏を狙う。店舗を標準化する。M&Aで成長する。大型店で勝負する。グループの力を活用する。地域でブランドを築く。7社には、それぞれ異なる「勝ち方」があります。

そして共通しているのは、「自分たちは、どこで、どう戦うのか」を明確にしていることです。企業の強さは、売上高や店舗数だけでは測れません。その数字の背景には、各社が選んできた独自の成長戦略があります。

地方から生まれたドラッグストア7社を比較すると、日本の小売業には、全国一律ではない、さまざまな成長のかたちがあることが見えてきます。